重賞ウィナーレポート

2017年08月13日 エルムS G3

2017年08月13日 札幌競馬場 曇 重 ダ 1700m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ロンドンタウン

プロフィール

生年月日
2013年04月22日 04歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:19戦6勝
総収得賞金
180,946,000円
カネヒキリ
母 (母父)
フェアリーバニヤン  by  Honour and Glory(USA)
馬主
薪浦 亨
生産者
松浦牧場 (新冠)
調教師
牧田 和弥
騎手
岩田 康誠
  • 仲睦まじい母娘
    仲睦まじい母娘
  • 母フェアリーバニヤン
    母フェアリーバニヤン
  • 半妹の当歳、父タートルボウル
    半妹の当歳、父タートルボウル
  • ロンドンタウンが過ごした厩舎。奥には自慢の放牧地が広がる
    ロンドンタウンが過ごした厩舎。奥には自慢の放牧地が広がる
  • 松浦牧場のメイン事務所
    松浦牧場のメイン事務所

 8月13日、札幌競馬場で行われた第22回エルムステークス(G3)は岩田康誠騎乗で4番人気のロンドンタウンが、好位追走から差し切って初コンビでJRA重賞初勝利、ダート1700m1分40秒9は09年にマチカネニホンバレが記録した1分41秒7を0秒8更新するJRAレコードとなった。また、JRA賞最優秀ダート馬を2度経験している父カネヒキリにとっても産駒のJRA重賞初勝利となった。今後は選出された韓国G1コリアカップに向かう予定だ。

 勝ったロンドンタウンは、新冠町にある松浦牧場の生産馬。父カネヒキリ、母フェアリーバニヤン、母父Honour and Gloryという血統。2015年10月の東京競馬場で行われた新馬戦でデビュー、3戦目の京都ダート1200mで初勝利した。今年2月の交流重賞・佐賀記念(Jpn3)で重賞初勝利。3月のマーチS(G3)4着、4月のアンタレスS(G3)2着と好走を続け、平安S(G3)をはさんで今回、初の北海道遠征でJRA重賞ウイナーの仲間入りを果たした。

 札幌競馬場に駆け付け観戦していた松浦牧場代表松浦快之さんは「マイナス14キロでも馬体が細く見えませんでした。1頭、人気を集めている馬がおりましたが、この馬もパドックでは集中力もあり落ち着いていましたので、良い状態だとオーナーと話していました」と当日の様子を話してくれました。

 心配だったのは「4コーナーに入ると楽をするところがある馬」ということ。それでも手応えよく4角をまわると前を行く2頭をまとめて交わして先頭でゴールへと飛び込んだ。

 「最後の直線では、思わず声が出てしまいましたが、岩田ジョッキーの手腕でロスなくこなして上手く出てくれましたね。57キロを背負って、JRA重賞を勝ってくれたので、胸を張ってオープン馬と言えると思います。最近のサラブレッドはみんな強く、丈夫になって来ていますので1勝するのも大変な時代です。配合関係、育ってきた環境、色々なものがリンクして全てがうまく行かないと勝てない時代に勝てたのは、厩舎サイドが万全な調整をして臨んだ結果ではないでしょうか。関係者の皆様のお陰だと思っています」と嬉しそうに関係者への感謝の気持ちを口にして、愛馬の勝利を称えた。

 ロンドンタウンはカネヒキリ産駒らしい良い馬体で生まれ、順調に成長していったそうだ。「祖母にあたるキャタラクトはストームキャットの肌馬というところが気にって、私がアメリカのせりで購入して来た馬です。母フェアリーバニヤンがお腹に入っている状態で輸入しました。祖母はうるさくてカリカリしている馬ですが母は大人しい馬。ロンドンタウンの大人しい性格は母、内に秘めた勝負根性は祖母から受け継いだのではないかと思います。そういう馬から代を経て重賞勝ち馬が出てくれたので嬉しい限り。あの時キャタラクトを購入して良かったと改めて思います。母フェアリーバニヤンは年々仔出しが良くなっていて今年の当歳父タートルボウルの牝も雄大な馬で成長が楽しみです」。現在は、オルフェーヴルを受胎しているそうで、誕生が待ち遠しい。

 過去にロッキータイガー(第5回ジャパンカップ(G1)2着)を輩出した松浦牧場はサラブレッドセールでも生産馬の評価は高い。競走馬の生産から中期育成まで松浦代表を中心にスタッフ6名と力を合わせて手掛けている。「育成の段階に入るとほとんどの時間を厩舎の中で過ごす生活になりますので、牧場にいる間はそれまでの成長段階においての基礎的な部分を作るのが生産牧場のできる事だと考えています。具体的には厳しい環境での放牧で強い馬体造りを目指していますが、その分季節に対応するなどスタッフ総出で健康管理とチェックを事細かく実施しています。大部分の時間を過ごす放牧地は「牧場は草が命」と言う言葉を信じ食べる草を豊富に、そして掃除刈りをマメにしています。草ばかりではなく餌もしっかり食べさせて胃と顎をつくる、そうやって環境に順応する強い馬を育てて、2歳のうちに1勝はできる馬をつくる目標で取り組んでいます。」

 松浦代表自ら手入れに励む自慢の広大な放牧地はどこまでも美しく清々しい。やっと昔から作りたかった形になって来たと目を輝かせる。「キーンランドのせりに向かう時、シカゴのレキシントンのブルーグラス飛行場から国内線に乗るのですが、その時飛行機の窓から見る広大で美しい牧場の景色にカルチャーショックを受けまして。いつか自らの牧場もこういう景色にしたいと思っていました。それから少しずつ積み重ねてここまで来ました。ロンドンタウンもレースを積み重ねたから重賞を手に出来たのでしょう。回復力もよく吸収力も良いので今後にも期待しています。」牧場の仕事ができて幸せだと語る松浦代表は愛馬の着実な成長に目を細めエールを送った。