重賞ウィナーレポート

2017年03月12日 中山牝馬S G3

2017年03月12日 中山競馬場 晴 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:トーセンビクトリー

プロフィール

生年月日
2012年04月23日 05歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:16戦6勝
総収得賞金
167,596,000円
馬主
島川 隆哉
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
角居 勝彦
騎手
武 豊

 ノーザンファーム早来で牝馬の調教主任を務める日下和博氏は、厩舎長を務めていた頃に中央の重賞で勝利をあげた育成馬の蹄鉄を、厩舎の休憩所に飾っていた。

 その飾られた蹄鉄の数はなんと19組。今後、その数は21組まで増えることとなるが、つまり21頭の育成馬が、日下氏が育成馬の管理を任されていた時期に、重賞馬となったという事実でもある。

 「重賞はこれ以上の数を勝たせてもらいました。頑張ってくれた馬たちだけでなく、牧場のスタッフ、そしてオーナーや調教師の方々、厩舎スタッフの皆さんに感謝するだけです」と日下調教主任は飾られた蹄鉄を見つめる。

 蹄鉄が飾られていた休憩所は日下氏が調教主任となった際に、共に重賞馬を育ててきた村上隆博氏が厩舎長を務める、村上厩舎に引き渡されることとなった。それでも蹄鉄だけでなく、ブエナビスタといった育成を手がけた名馬たちの口取り写真も、配置が変わることなく残されている。

 「蹄鉄の数が19組まで行ったときには区切りも良くなるので、もう一頭重賞を勝ってくれないかなと思っていました。トーセンビクトリー、そしてメラグラーナ(オーシャンS(G3))のどちらかにチャンスがあると思っていましたが、2頭共に勝利をあげてくれて、本当に良かったです」

 デビューから16戦目での重賞初制覇となったトーセンビクトリーであるが、デビュー前から注目を集めていた馬でもあった。2013年に行われたセレクトセールの1歳セクションでは、母の競走実績と、兄弟に重賞馬がずらりと並ぶその血統背景も評価され、1億1,025万円(税込)で落札。育成調教に移ってからも動きの良さは話題となり、当時、取材に来ていたマスコミからは、当時、日下厩舎で育成されていたタッチングスピーチ、カービングパスと共に、「三本の矢」と称されることもあった。

 「タッチングスピーチは重賞勝ち馬となってくれましたし、カービングパスも3歳時には重賞で人気になるほどの馬になりました。その2頭と比べると、トーセンビクトリーは遅咲きの印象がありますが、育成時に感じていた能力の片鱗からすると、この重賞勝利は全く不思議では無かったですね」

 トゥザヴィクトリーの産駒たちはクラシックに属した活躍を残している一方で、古馬となってからも息の長い活躍を続けていることが、競走成績にも証明されている。トーセンビクトリー自身も初勝利はデビューから3戦目であり、クラスを上げていた3歳時には、初めての重賞挑戦となるローズS(G2)で3着に入って秋華賞(G1)へと出走。次の年にはオープン入りを果たし、ヴィクトリアマイル(G1)にも出走している。

 「ここまで来るのに怪我もありましたが、じっくりと育ててくれた角居厩舎の皆さん、そして調整を行ってきたノーザンファームしがらきスタッフも、様々な苦労があったと思います。この馬の能力を信じてきた自分にとっても、感慨深い重賞勝利となりました」

 この重賞勝利により、賞金上積みを果たしたトーセンビクトリーは、今後のローテーションが組みやすくなった。今後の選択肢としては、昨年の雪辱を期すヴィクトリアマイル(G1)、そして母仔制覇を目指すエリザベス女王杯(G1)も入ってくる。

 「この中山牝馬S(G3)も強い勝ち方でしたし、今後、まだまだ成長を遂げていくはずです。これからの活躍が楽しみにもなりますが、順調にレースを使えなかった時期もあるだけに、無事に長く競馬をしてもらいたいとも思います」

 そう遠くない時期に村上厩舎へは、メラグラーナとトーセンビクトリーの蹄鉄が関係者から届くはず。将来、その蹄鉄は2頭の活躍によって、G1馬の蹄鉄となるのかもしれない。