重賞ウィナーレポート

2016年10月16日 秋華賞 G1

2016年10月16日 京都競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ヴィブロス

プロフィール

生年月日
2013年04月09日 03歳
性別/毛色
牝/青毛
戦績
国内:7戦3勝
総収得賞金
186,098,000円
ディープインパクト
母 (母父)
ハルーワスウィート  by  Machiavellian(USA)
馬主
佐々木 主浩
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
友道 康夫
騎手
福永 祐一

 ノーザンファーム早来牧場の育成厩舎として、幾多の名馬を送り出してきた日下厩舎。その輝かしい歴史の中で、初めての重賞勝ち馬、そしてG1馬ともなったのが、秋華賞(Jpn1)を制したブラックエンブレムだった。

 その秋華賞から8年。育成馬であるヴィブロスが周回を重ねるパドックには、日下和博調教主任の姿があった。

 「秋華賞(G1)の応援に来たのは、ブラックエンブレム以来となります。結果としては応援に来て良かったですよね」と日下調教主任は笑みを浮かべる。今年の牝馬重賞戦線において、ノーザンファーム生産馬は好成績を残しているが、その中でも日下厩舎から巣立った3歳牝馬たちの活躍が目覚ましい。

 チューリップ賞(G3)を優勝したシンハライトは桜花賞(G1)で2着となると、続くオークス(G1)を優勝。ローズS(G2)も制して、この世代の牝馬では抜けた能力を持っていることを証明した。そのオークス(G1)で2着、フローラS(G2)を優勝したチェッキーノ、そしてスイートピーSを優勝し、オークス(G1)では4着だったジェラシーも日下厩舎の育成馬となる。

 「秋華賞(G1)では育成馬でこそありませんが、ノーザンファーム生産馬としてはビッシュも出走していましたし、メジャーエンブレムの活躍も目立っていました。生産された牝馬の層の厚さを証明できたことは牧場スタッフとして嬉しかったですし、それに貢献できたことも光栄な気持ちがありました」

 ヴィブロスの全姉で、ヴィクトリアマイル(G1)を連覇したヴィルシーナもまた、日下厩舎でトレーニングを積んだ馬だった。

 「ヴィブロスが来たときはヴィルシーナを小柄にしたような印象がありました。それでも動きといった評価は高く、当時はスタッフ内でも『シンハライトより上なのでは』との声も聞かれていた程です」

 2歳10月のメイクデビュー京都でデビューを果たしたヴィブロスは、デビュー2戦目に2歳未勝利戦を快勝。次の年には牝馬クラシック戦線での活躍も嘱望されたが、チューリップ賞(G3)、フラワーC(G3)共に12着に敗れる。

 「初勝利をあげた後、喉頭蓋エントラップメントが判明して手術を行いました。3歳の春先はその影響もあったのでしょうし、結果としてローテーションもきつくなってしまったのかもしれません」

 ノーザンファームしがらき、そして管理をする友道厩舎で立て直しを図られたヴィブロスは、約4か月の休養を挟んだ後、7月に中京競馬場で行われた3歳500万下を快勝。そのレース内容に日下調教主任は秋華賞(G1)への手応えを掴む。

 「向こうでしっかりと立て直してもらえたことが、成長した馬体、そしてレース内容にも現れていました。何とか秋華賞(G1)に出走して欲しいと思いながら紫苑S(G3)を見ていたのですが、不利を受けながらも2着に入って出走権利を掴んだ時は嬉しかったですね」

 その秋華賞(G1)でヴィブロスは中団からレースを進めていく。何の不利も無く迎えた最後の直線、弾けるような末脚を見せ始めたとき、日下調教主任は勝利を予感したという。

 「届くかな?とも思いましたが、先に抜け出した馬を交わしにかかったときには勝てると思いました。応援に来たG1を勝てたというだけでなく、また違った喜びや感慨もありました」

 実はこの3歳世代が、日下調教主任が厩舎長として直接管理を行った最後の世代となる。その思いを受け止めたかのように、育成馬たちはコンスタントな活躍をみせ、その中からシンハライト、そしてヴィブロスが世代の頂点に立つ活躍を見せた。

 現在はノーザンファーム早来牧場に4つある、牝馬の育成厩舎をまとめる立場となった日下調教主任だが、新調教主任をバックアップするかのように厩舎長、そして育成スタッフたちは熱心な仕事を続け、それは早来牧場で育成された2歳馬たちの競走成績にも証明されている。

 「今年の2歳馬も能力の高い馬が揃っているだけに、今後の活躍が本当に楽しみです。勿論、ヴィブロスといった3歳世代も、来年以降は重賞戦線を沸かせてくれそうですし、今後もこのいい流れを世代を問わずに継続していきたいです」

 その力強い言葉には「調教主任」としての責任感も感じられた。