重賞ウィナーレポート

2015年02月15日 共同通信杯 G3

2015年02月15日 東京競馬場 晴 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:リアルスティール

プロフィール

生年月日
2012年03月01日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:2戦2勝
総収得賞金
416,768,000円
ディープインパクト
母 (母父)
ラヴズオンリーミー(USA)  by  Storm Cat(USA)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
矢作 芳人
騎手
福永 祐一

 育成スタッフはおおよそ1歳の秋から2歳の夏、あるいは秋に訪れる入厩までの時間しか、自分の目の前にいる馬に携わることができない。そんな限られた時間の中で、目の前にいた馬たちの思い出や、レースで勝利した際の感動を、このような取材で我々に話してくれる。

 しかし、ノーザンファームしがらきの今井翔一さんは、育成スタッフとは思えない程の時間を、ある馬と共に過ごすことができた。その馬とは、今年の共同通信杯(G3)を制したリアルスティール。ノーザンファーム空港牧場で厩舎長を務めていた今井さんは、現在、研修のためにノーザンファームしがらきへと赴任しているが、その移動とタイミングを合わせるようにリアルスティールもまた、ノーザンファーム空港牧場からノーザンファームしがらきへと繋養地を移した。

 「血統的にも育成厩舎に来る前から期待が大きかった馬ですが、本当に良くなったと思えたのは、2歳の夏を迎えてからですね。馬格通りのパワー溢れる走りが出来るようになり、また調教の度に馬が変わってきたような印象を受けました」(今井さん)

 今井さんとリアルスティールの移動時期が重なったのは偶然ではないのだろう。ノーザンファームしがらきで調整されることとなったリアルスティールの背中にいたのは、誰よりも乗り味を良く知る今井さんだったからだ。

 「ノーザンファーム空港牧場とはコースや坂路の斜度まで違っている中、より競馬場に近づいた調教をするためには、どんなことをすればいいのかをここでは学ばせてもらっています。それだけにメイクデビューを勝ってくれた時には、これまでの育成馬では感じたことの無いような充実感を覚えました」(今井さん)

 しかし、メイクデビューを勝っただけで目標達成とはならないのが、ノーザンファームしがらきの仕事である。レース後、牧場へと戻ってきたリアルスティールに、再び今井さんは跨ることになるが、その際、管理をする矢作芳人調教師、そしてレースに騎乗した福永祐一騎手から、レース内容や騎乗した感想などを受け取り、それを元に、次走への課題をクリアにする作業が始まった。

 「先生とも話し合った結果、共同通信杯(G3)に向けてはフォームを改善する必要があると思いました。次走までの期間には、その辺を重視しながらトレーニングをしてきましたし、今回のレースを見ていても、その課題はクリアできていたように感じられました」(今井さん)

 2戦目での共同通信杯(G3)制覇。これは史上初の快挙でもあるが、今井さんが取り組んできた調教、それを元にレースで最高のパフォーマンスが出来る状態に仕上げた矢作厩舎。そして能力を引き出す好騎乗を見せた福永騎手と、三位一体となった結果でもあり、快挙ながらも、決して偶然ではないことに気付かされる。

 「リアルスティールと共にこのような経験を出来ていることは、本当に嬉しいですし、研修に行かせていただいた吉田勝己(ノーザンファーム)代表、そして吉田俊介(ノーザンファーム空港牧場)場長には、本当に感謝するだけです」(今井さん)

 数年後、今井さんはノーザンファームしがらきで得た経験を元に、再びノーザンファーム空港牧場へと戻ることになっている。その際、リアルスティールが今後の活躍によって、これからの仕事に生かされていく経験と、ホースマンとしての至上の喜びを、今井さんに与えてくれることになっていくのだろう。