重賞ウィナーレポート

2014年12月06日 ステイヤーズS G2

2014年12月06日 中山競馬場 晴 良 芝 3600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:デスペラード

プロフィール

生年月日
2008年02月27日 06歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:34戦9勝
総収得賞金
323,976,000円
ネオユニヴァース
母 (母父)
マイネノエル  by  トニービン(IRE)
馬主
市川 義美
生産者
田中 裕之 (静内)
調教師
安達 昭夫
騎手
横山 典弘
  • 田中裕之社長と母マイネノエル
    田中裕之社長と母マイネノエル
  • 母マイネノエル
    母マイネノエル
  • 牧場の厩舎
    牧場の厩舎
  • 約1000mの沢沿いにある放牧地
    約1000mの沢沿いにある放牧地
  • 山を削り放牧地を拡げた~取材翌日の雪化粧
    山を削り放牧地を拡げた~取材翌日の雪化粧

 暮れの名物レース、JRAの最長距離重賞競走「第48回ステイヤーズS(G2)」は新ひだか町静内の田中裕之さん生産のデスぺラードの2連覇となった。中団のやや前よりを進み、直線では横山騎手のゴーサインによって、豪快に抜け出した。競馬場のスタンドからレースを見守った田中社長は「横山騎手は100点満点、いや200点ですよ。馬の事もレースのこともすべて知り尽くしています。」と喜ぶ。

 この勝利は、厩舎の勝利だという。秋初戦となった京都大賞典(G2)のあと、他馬を怖がらないように新しいブリンカーを試験してきたという。前走のアルゼンチン共和国杯(G2)では惜敗したが、今回は、さらにブリンカーを微調整しての挑戦だった。当日、競馬場のパドックで田中社長が多少不安に思ったのは「デスペラードが、新しいこのブリンカーに慣れたのか」ということだったという。

 しかし、デスペラードは、完璧なレースで快勝した。愛馬が陣営の期待に応えてくれたことが何より嬉しかった田中社長だ。

 有馬記念(G1)への再挑戦への夢もあったが、屈腱炎を患い引退を余儀なくさせられた。だが、引退後は地元のアロースタッドに種牡馬入りする予定が決まり、田中社長を喜ばせている。

 本場の母マイネノエルはビッグレッドファームから譲ってもらった馬だという。父トニービンで、祖母マイネキャロルはブライアンズタイムを父に持つ。この馬が田中裕之さんの牧場にやってきたのは、ビッグレッドファームの岡田繁幸氏の厚意によるものだという。

 と、いうのもビッグレッドファームは、以前、田中裕之さんの牧場の近くにあり、当時、岡田繁幸氏に「血統の良い繁殖を持つべき」と勧められたものだという。

 田中社長は、当時を振り返り「岡田社長の考えは進んでいた。もっと早くから勉強しておけば、教えてもらえることが沢山あったのだが。」と謙虚に語る。

 譲ってもらった母マイネノエルにネオユニヴァースを配合して生まれたのがデスペラードだ。幼駒の時からバランスの良い馬で期待をしていたという。

 その後、本馬は、良い環境を持つ田中さんの牧場で元気に育った。田中さんはアイルランドなど先進諸国へ視察に行った際、馬だけではなく牧柵やゲート、厩舎に使われているものなど馬に安全で有効なものを観察してきた。現在使われているゲートなどは、そのときのものを参考に、自らの手で工夫して作り上げたものだという。

 また、強い馬づくりには広い放牧地が必要だと、重機を駆使して山を削り、沢の山間に放牧地を拡げてきた。田中さんの牧場は川と山の間にある河川敷を放牧地としているだけに、湧水や流水の対策は大変な作業で、綺麗な放牧地の下には何十本もの暗渠用の管が埋められているという。

 本馬は当歳時に、その頃に完成した沢沿いの長さ1000m程もある放牧地で十分に走り回って育った。重賞を3勝して故郷で種牡馬入りした本馬は、また、大きな恩返しを牧場してくれることだろう