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重賞ウイナーレポート特別編~ヴィブロス ・ドバイターフ(G1)

  • 2017年04月17日

 「モレイラマジック」に導かれ、ヴィブロスがG1 2勝目をドバイの地であげた。

 道中は後方を進んだヴィブロス。最後の直線を迎えた時、小柄な牝馬にはまるで壁のような馬群が立ちはだかる。

 「直線に向いた時は勝てないのではと思いました。しかし、そこから馬群を縫うようにしながら抜け出してきた時には驚きましたし、久しぶりに凄い競馬を見せてもらいました」と話すのは、厩舎長時代に育成調教を手がけた日下和博調教主任。全姉のヴィルシーナの育成も行ってきた日下調教主任であるが、育成時の評価はヴィルシーナよりヴィブロスの方が高かったという。

 「それでも昨年の今頃は、チューリップ賞(G3)、フラワーC(G3)で大敗を重ねていた時期であり、まさかその一年後に、これだけの競馬ができているとは自分だけで無く、誰もが想像していなかったのではないのでしょうか」

 約4か月もの休養を挟んだヴィブロスは、紫苑S(G3)の2着で権利を掴んで出走した秋華賞(G1)を見事に優勝。姉と同じG1ホースとなる。今年初戦となった中山記念(G2)に出走するも、一線級の牡馬を相手にして5着に敗退。しかし、ドバイターフ(G1)出走に向けて、陣営の決断は揺るがなかった。

 「勝利の最大の要因は、佐々木オーナーの決断だったと思います。輸送も強いイメージが無かった中、友道調教師や、厩舎のスタッフがいい状態に持って行ってくれましたし、全てが揃ったからこそ、この勝利に繋がったと思います」

 ノーザンファーム生産の牝馬が、海外のG1レースを勝利するのは、ドバイシーマクラシック(G1)を制したジェンティルドンナ以来となる。

 「そのジェンティルドンナに何度も悔しい思いをさせられてきたのが、ヴィブロスのお姉さんとなるヴィルシーナですからね(笑)。でも、そのヴィルシーナもまた、古馬となってからG1を優勝したように、本来的には古馬となってから完成する血統でなのでしょう。あのメンバーを相手にしながらでも、成長した姿を証明できたのかもしれません」

 現在はノーザンファーム早来の4厩舎全ての管理を任される立場となった日下調教主任。調教主任となって最初の世代となる3歳馬の中から、リスグラシューが今年の桜花賞(G1)で2着に入る活躍。この後のNHKマイル(G1)やオークス(G1)でも主役の座に就こうとしている。 

 「ヴィブロスにはこうした世代の挑戦を受け止めるような馬となってもらいたいですし、育成を手がけた同世代の馬たちも、重賞勝ちを果たしているなど高いレベルの馬が揃っています。秋シーズンはそれぞれの馬が無事に、最高の舞台で顔を揃えることを願っています」

 この後、ヴィブロスはノーザンファーム早来にて休養。世界を制した走りが、この休養を経てどれほどパワーアップされているのか楽しみでならない。