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重賞ウイナーレポート特別編~モーリス・香港カップ(G1)

  • 2016年12月26日
  • レース終了後に多くの人が祝福に訪れた
    レース終了後に多くの人が祝福に訪れた

 日本でのラストレースを勝利し、最後に選んだのは3度目の香港遠征。ここまで負け知らずの競馬場だけに“絶対王者”の風格を漂わせ、地元メディアからも本命視されていた。今回は2000mの香港カップ(G1)。多くの日本人が現地を訪れ、昨年の覇者エイシンヒカリとともに人気を集めていた。

 レース当日、戸川牧場では最後の勇姿をみんなで応援しようと親戚が集まってテレビを囲んだ。実は妻、晴恵さんは現地に応援に行く予定だったが、前日災害レベルの大雪で飛行機が欠航。夜遅くまで空港で粘ったものの乗ることができず、断念して家に戻っていた。

 レース前、戸川洋二代表は「大丈夫、勝つ」と力を込めた。それは言霊となって香港へ届いたか、モーリスは次元の違う脚を使い、これまでの集大成とも言える強烈なレースを展開、有終の美を飾った。

 感動を噛みしめる間も無く、鳴り続ける電話対応、地区の生産者仲間や三輪茂日高町長らが祝福に訪れ、賑やかな夜となった。

 「本当にこれで最後なんだなぁ」と万感の思いを吐露する洋二さん。その脳裏には自身の幼い頃の記憶が蘇っていたのかも知れない。メジロ牧場に勤務していた父の元、メジロ牧場産の名馬と触れ合う機会に恵まれていた。

 「年を重ねて、一つ一つ課題をクリアして心身ともに成長していく面白さをモーリスが教えてくれました。メジロ牧場の北野豊吉オーナーも、クラシックよりも古馬G1を重要視した方でしたので、きっと、モーリスのような馬が好きだったんだと思います。その感覚を実感して、初めて理解できたような気がします」

 最高のパフォーマンスを人々の目に焼き付け、現役生活に幕を降ろすモーリス。次はその産駒でG1制覇という夢が広がる。「自分のところの生産馬がG1制覇、種馬になると頭ではわかっていても、何か別の世界の話みたいで不思議な感じです。まだ実感が湧かない、というのが正直なところです」と笑う洋二さん。

 2歳秋のレコードタイムデビューから、心身ともに安定せず勝ちきれなかった3歳時、長期休養を挟んだ4歳で覚醒し、最強マイラーへ。そして距離の壁を打ち破った今年…。怒涛のごとくターフを席巻したモーリス伝説の第2章がまもなくスタートする。