馬産地ニュース

重賞ウイナーレポート特別編~サトノクラウン・香港ヴァーズ(G1)

  • 2016年12月21日

 皐月賞(G1)から7度目となる挑戦。ついにサトノクラウンがG1タイトルを掴んだのは、世界の強豪がひしめき合う、香港のシャティン競馬場だった。

 11日に行われた香港国際競走において、芝2400Mで行われた香港ヴァーズ(G1)に出走したサトノクラウンは、最後の直線で先に抜け出したハイランドリールに一完歩、一完歩ごとに詰め寄り、ゴール前ではまるで測ったかのように半馬身差捉えて勝利。そのハイランドリールは、今年のブリーダーズカップターフ(G1)とキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)を勝利し、レコード決着となった凱旋門賞(G1)でも2着に入着。芝中長距離では世界屈指の実力馬であることは疑いようもなく、このレースでも圧倒的な1番人気を集めていただけに、サトノクラウンの初G1制覇は、また違った価値を持たらすことにもなった。

 「ハイランドリールは、昨年、海外に研修に出かけた時に実際に見てきた馬であり、その姿だけでなく強さも知っているだけに、また格別な勝利ともなりました」とサトノクラウンの調教、そして今年の夏の調整にも携わってきた、ノーザンファーム空港牧場、R厩舎の佐々木淳吏厩舎長は話す。

 「夏の調整は疲れが抜けきらず、立て直すのに時間を要しました。それだけにいい状態でレースに臨ませてくれた堀先生や厩舎スタッフの皆さんに感謝するだけですし、何よりも素晴らしい騎乗を見せてくれらモレイラ騎手は改めて素晴らしいジョッキーだと思いました」

 育成時から高い評価を集めていたサトノクラウンではあったが、全姉のライトニングパールはスプリントG1のチヴァリーパークS(G1)の勝ち馬と、血統のイメージ的には芝の短距離馬との印象もある。

 「それでも馬体やしなやかな動きにはスプリンターらしさは無かったですし、ための効いた走りもできるので、2000mぐらいまでならこなせると思っていました」

 しかし、芝1800mのメイクデビュー東京で初戦を飾ったサトノクラウンは、同じ条件で行われた東スポ杯2歳S(G3)だけでなく、次の年には弥生賞(G2)も勝利。日本ダービー(G1)でも3着に入着と、距離の壁を感じさせないレースを見せていく。

 「乗り出した頃から評価の高い馬でしたが、2歳の春先にグンと良くなった時には、新馬戦で勝ち負けができるという確信がありました。にも関わらず、レース内容を見ていても成長しているのを感じますし、走りも更に力強くなった印象さえあります」

 オーナーである里見治氏は、同じR厩舎の育成馬であるサトノダイヤモンドで、所有馬としては初めてのG1制覇を達成。朝日杯FS(G1)でもサトノアレスが優勝と、国内外で立て続けにG1レースを勝利している。

 「里見オーナーにとって初めてのG1馬と、初めての海外G1馬に接することができたのは大変に光栄なことです。2頭共に更なる活躍が期待できそうですし、今後は2頭の対決もあり得ると思うので、より楽しみになってきます」

 そのサトノダイヤモンドは、今週の有馬記念(G1)に出走。里見オーナーだけでなく、R厩舎育成馬からも勢いを感じるだけに、また佐々木厩舎長から喜びの声が聞けそうだ。