馬産地ニュース

JRAが新ひだか町でシンポジウム

  • 2016年07月15日
  • 獣医師など約200名が出席したシンポジウム
    獣医師など約200名が出席したシンポジウム
  • 主催者を代表して挨拶する山野辺啓JRA馬事部長
    主催者を代表して挨拶する山野辺啓JRA馬事部長
  • 午前のシンポジウムの座長を務めた佐藤文夫氏
    午前のシンポジウムの座長を務めた佐藤文夫氏

   7月14日、JRA日本中央競馬会は新ひだか町静内の静内エクリプスホテル2Fエクリプスホールにおいて、「第44回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」を開催した。

   シンポジウムには、生産地で従事する獣医師や牧場関係者のほか、日本各地からの獣医師を含め約200名が出席。開会にあたり主催者を代表して山野辺啓JRA馬事部長は「生産地の皆様におかれましては、日頃より育成馬等予防接種推進事業、馬鼻肺炎ワクチン接種推進事業、馬伝染性子宮炎蔓延防止対策事業、生産地疾病の調査研究になどに対しまして、多大なるご理解とご協力いただいておりますことを、この場を借りてお礼申し上げます。本年は午前中のシンポジウムとして、若馬の発育期整形外科的疾患について開催します。生産地において、育成段階での整形外科的疾患は問題となっています。また、ここ10年で市場におけるレポジトリーの普及により、購買者の関心も高まっています。レポジトリーにつきましては、2004年のJRAブリーズアップセールから本格的に導入されました。現在における市場振興に役立っているとおもいます。皆様方におかれましては、これからの医療技術の発展に寄与していただくとともに、本シンポジウムがそのことの一助になればと期待しております」と挨拶した。

   午前中のシンポジウムでは、JRA日高育成牧場の佐藤文夫氏が座長となり、「競走期に影響を及ぼす若馬の発育期整形外科的疾患」をテーマに、レポジトリーで認められるX線所見の中で、競走成績に影響を及ぼすもの、レポジトリーとは関係なく育成期の飼養管理に影響を及ぼす発育期整形外科的疾患(DOD)、手術適用なDOD症例、治療の限界や可能性について、近年になりレポジトリーでも取り上げられるようになった後膝のDODを中心とした疾患について、5名の演者が講演した。

   午後からのシンポジウムでは、北海道日高家畜保健衛生所の伊藤満氏を座長に、「馬感染症のサーベイランスおよび疫学調査」をテーマに、JRA競走馬総合研究所から3名が講演。続いて一般講演に移り、感染症や重種馬の症例などについて、4名の演者が講演した。

   当日開催されたプログラムは下記の通り(敬称略)。

シンポジウム1「競走期に影響を及ぼす若馬の発育期整形外科的疾患」

座長:佐藤文夫(JRA日高育成牧場)

1)軽種馬の発育期整形外科的疾患(DOD)について 演者:佐藤文夫(JRA日高育成牧場)

2)サラブレッド種1歳馬のレポジトリー提出X-ray画像に認められる異常所見 演者:宮越大輔(日高軽種馬農業協同組合)

3)軽種馬の飼養管理に影響を及ぼしている発育期整形外科的疾患の調査 演者:前田昌也(日高軽種馬農業協同組合)

4)DODの外科治療 演者:樋口徹(NOSAI日高家畜診療センター)

5)若齢サラブレッド 393 頭の膝関節に発生した骨関節疾患に対する関節鏡手術 演者:田上正明(社台ホースクリニック)

6)総合討論(今後の課題など)

シンポジウム2「馬感染症のサーベイランスおよび疫学調査」成績報告

座長:伊藤満(北海道日高家畜保健衛生所)

1)ウイルス性疾病のサーベイランス 演者:辻村行司(JRA競走馬総合研究所)

2)細菌性疾病のサーベイランス 演者:丹羽秀和(JRA競走馬総合研究所)

3)Pneumocystis carinii 肺炎の疫学調査 演者:上野孝範(JRA競走馬総合研究所)

4)総合討論

一般講演

座長:片山芳也(JRA競走馬総合研究所)

1)馬の Actinobacillus equuli感染症の回顧的調査及び分離菌の解析について 演者:本間慎太郎(北海道日高家畜保健衛生所)

2)遺伝性多発性外骨症の1例 演者:山下紀幸(日高地区農業共済組合)

座長:羽田哲朗(JRA日高育成牧場)

3)繁殖牝馬におけるデスロレリン注射剤を用いた発情誘起の効果 演者:柴田良(日高軽種馬農業協同組合)

4)重種馬の胎盤停滞に対し臍帯からの注水処置(Water Infusion法)を実施した2症例 演者:福本奈津子(家畜改良センター十勝牧場)