馬産地ニュース

薬物検査とスピード遺伝子検査についての講演会が行われる

  • 2014年04月15日
  • 新ひだか町静内で行われた薬物検査とスピード遺伝子検査の講演会
    新ひだか町静内で行われた薬物検査とスピード遺伝子検査の講演会
  • 主催者を代表して挨拶する藤原俊哉日高軽種馬農業協同組合副組合長
    主催者を代表して挨拶する藤原俊哉日高軽種馬農業協同組合副組合長
  • 講師を務めた競走馬理化学研究所の永田俊一氏と木下賢治氏
    講師を務めた競走馬理化学研究所の永田俊一氏と木下賢治氏
  • 講演会には牧場関係者や獣医師約100人が出席した
    講演会には牧場関係者や獣医師約100人が出席した

 4月12日夜、新ひだか町静内にある静内エクリプスホテル(旧静内ウエリントンホテル)2階エクリプスホールにおいて、薬物検査ならびにスピード遺伝子検査についての講演会が行われた。

 この講演会は北海道市場の主催で、公益財団法人競走馬理化学研究所が協力。講演会では同研究所事業部薬物検査課長の木下賢治氏による「馬産地におけるアナボリックステロイド検査について」と、同研究所管理調整室長の永田俊一氏による「エクイノム・スピード遺伝子検査について-遺伝子検査で距離適性が見えた!?-」の2つの講演が行われた。

 会場となったエクリプスホールには、出産・種付けシーズンで忙しい時期にもかかわらず、日高・胆振から牧場関係者や獣医師約100人が出席。講演会開催にあたり主催者を代表して日高軽種馬農業協同組合の藤原俊哉副組合長は「北海道市場のトレーニングセール申込馬について、アナボリックステロイドの全頭検査を実施することにしましたが、このアナボリックステロイドがどのような危険性を持ち、どのような影響力を及ぼすのか、馬産地ではまだ十分な理解が広がっていないのが現状です。2月27日に続き2回目となる今回の講演会では、検査・研究の現場で活躍する木下先生をお招きしました。講演を通じてアナボリックステロイドの使用禁止について啓蒙活動していきたいと考えてます。また、永田先生にはスピード遺伝子検査という大変興味深い話題についてお話していただきます。講演会を通じて今後の生産活動に役立てていただければとおもいます」と挨拶した。

 アナボリックステロイド(AS)とは男性ホルモンのテストステロンの持つ作用のうち、蛋白同化作用(筋肉増強)を高めるよう合成された薬物。発育不全や術後の回復促進などに適用されるが、パフォーマンスに影響を与える可能性や肝障害、生殖障害などの重篤な副作用が指摘されており、スポーツや競馬では使用を厳しく規制している。

 4月7、8日に浦河町の軽種馬育成調教センター日高育成調教施設で、10、11日に新冠町の日高軽種馬共同育成公社で実施された北海道市場トレーニングセール申込馬のAS検査に、永田氏とともに立ち会った木下氏は、海外の競馬先進国ではせり上場馬を対象とする薬物検査が以前より普及しており、公正な取引の必要条件となっていると説明。馬産地におけるトレーニングセール申込馬のAS検査については、「不正のない馬体、能力の証明は、信頼性あるせりが確立でき、薬物使用による副作用を防ぐことは、馬の福祉のためになり、積極的なクリーン競馬への取り組みは、競馬のイメージアップにつながる」とまとめた。

 続いて登壇した永田氏はエクイノム・スピード遺伝子検査は、「競走馬のミオスタチン遺伝子の型を判定して競走馬の距離適性を推測するもの」と解説。この検査を行うことで、「当歳馬は早い段階で将来の成長の見通しが立てられ、目的とする距離適性の個体を選抜できる。育成馬・競走馬は距離適性に応じた調教方法や適切なレースの選択が可能になる。繁殖馬は目的とする産駒生産のための交配計画や種牡馬・繁殖牝馬の宣伝にも効果的」と利点を強調した。

 競走馬理化学研究所は昭和40年に財団法人として設立。競走馬の薬物検査と検査法の開発・改良研究、軽種馬の親子判定及び個体識別のための検査などを行い、競馬の公正確保と学術の振興に寄与している。平成23年6月からは公益財団法人に移行。薬物検査部門は平成16年より試験所の能力に関する国際規格であるISO/IEC 17025 に適合した試験機関としての認定を受けている。現在、競走馬の薬物検査は年間約43,000件(中央競馬:10,000件、地方競馬:33,000件)、軽種馬の親子判定及び個体識別に係る検査は年間約7,000件を実施しているという。

 平成25年6月にスピード遺伝子検査法を確立したエクイノム社(アイルランド)と業務提携。日本の競走馬を対象としたエクイノム・スピード遺伝子検査の検査機関として依頼を受け付けている。

 詳細は競走馬理化学研究所のホームページ(http://www.lrc.or.jp/)。