馬産地ニュース

追悼~ローブデコルテ

  • 2014年03月25日
  • 亡くなったローブデコルテ(2013年9月馬産地見学ガイドツアー時に撮影)
    亡くなったローブデコルテ(2013年9月馬産地見学ガイドツアー時に撮影)

 何度経験しても慣れないもの。それは、無機質にそして唐突に流れてくる訃報のニュースだ。それが、まだ若い馬の場合はなおさら心が痛む。

 まだ10歳になったばかりのローブデコルテ死亡のニュースが流れたのは3月20日正午過ぎ。それは、JRAのホームページに掲載された。

 最後にローブデコルテの姿を見たのは、昨年、競走馬のふるさと案内所が行った「北海道馬産地見学ガイドツアー」のときのこと。毛色だけで安易な判断はできないが、年齢の割には黒さを残す芦毛だったのでどこか安心したような気がしたことを覚えている。

 そして、この馬を紹介するときのスタッフが誇らしげな表情だったことも印象的だ。それはツアーのときだけでなく、引退し、最初の仔を出産したとき。あるいは1歳になったその仔と育成厩舎で再会したとき。ローブデコルテと、その仔を紹介するときのスタッフの顔も忘れ難い。アメリカ生まれのローブデコルテは、もちろんノースヒルズの生産馬ではないが、牧場で働く人たちの誇りでもあり、とても愛された馬だった。

 母馬が仔馬を出産するということは、多くの方が当たり前のことだと思うように特別なことではないかもしれない。しかし、現場を知れば知るほどに、その行為が生命を賭して行う作業だということがわかる。ノースヒルズに限らず、すべての生産牧場では牝馬に種付けOKのサインが出たとき。妊娠したとき。出産を終えたとき。そして、無事に仔育てを行ったとき。そのすべてで胸を撫で下ろす。それは、逆の意味ではアクシデントが多いことの裏返しでもある。

 今回、ローブデコルテを襲った膀胱破裂という病気は決して多い症例ではない。むしろかなり珍しいものだ。それが、悔しい。

 ローブデコルテの思いでは、オークス(Jpn1)で見せた鬼脚よりもセンスたっぷりに見えた函館競馬場の新馬だ。2歳夏の中距離戦だから時計そのものは特筆すべきものではないが、1800mという距離を楽しむかのように走り抜けたレースぶりが印象的だった。ダービー馬・天皇賞馬も、有馬記念(G1)優勝馬も、そしてNHKマイルC(Jpn1)優勝馬もいる最強牝馬世代。その世代のオークス馬として、その名は永遠だ。残された産駒は2頭。いずれも牝馬だという。今は、残された仔たちの活躍とファミリーの繁栄を祈りたい。そんな気持ちだ。