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北海道2歳優駿はJRAアルムダプタが快勝

  • 2012年11月12日
  • 優勝したアルムダプタ
    優勝したアルムダプタ
  • キャリア一戦で実績馬を破った
    キャリア一戦で実績馬を破った
  • 492kgの馬体重で出走
    492kgの馬体重で出走
  • 喜びの口取り
    喜びの口取り
  • 栗東・五十嵐忠男厩舎所属馬が1・2着
    栗東・五十嵐忠男厩舎所属馬が1・2着

 11月8日、門別競馬場では2歳交流重賞、第39回北海道2歳優駿(Jpn3)が行われた。距離はダート1800m。

 今年はJRAから4頭、地元ホッカイドウ競馬所属馬5頭、岩手から1頭の10頭がエントリー。注目すべきは地元馬で、全て重賞連対実績馬が占める豪華メンバー。1番人気アウトジェネラルは栄冠賞(H2)、サンライズカップ(H3)2着の無念を晴らすべく、カイカヨソウ、ジェネラルグラント、ストーミングスターは重賞勝ちをひっさげての参戦。ホッカイドウ競馬ゆかりの血統・クラグオーは川崎の重賞で惜敗したものの、ホーム・門別で怖さがある。JRAからは2013年からダーレー・ジャパンで供用を始めるストリートセンス産駒・マルヴァーンヒルズ、名牝スキーパラダイスの血を引くファイブタブレットらが印を集め、今年もハイレベルの一戦を予感させた。

 レースはダッシュ良くジェネラルグラントが逃げ、カイカヨソウが2番手。アウトジェネラル、クラグオー、マルヴァーンヒルズは中団で脚をためる。息をつくように向正面で一旦流れは落ち着くが、3コーナーをまわって各馬ペースアップし、先頭集団5、6頭が火花を散らすように直線へ。まず先頭に立ったのはコスモコルデスだったが、すかさず最内からアルムダプタが反撃し、馬場の外目からはカイカヨソウ、アウトジェネラルがじわじわと伸びる。残り1ハロンを切ったところでアルムダプタが抜け出すと、最後まで隙を見せない走りで、2着に1馬身1/2差をつけてゴールを切った。2着にはコスモコルデスが入り、カイカヨソウが地元馬の意地を見せて3着。出走した牝馬2頭が2、3着に好走した。勝ち時計は1分53秒5(重馬場)。

 優勝した幸英明騎手は初のホッカイドウ競馬・交流重賞V。表彰式のインタビューでは、「キャリア2戦目で掴み切れていない部分もありましたが、4コーナーを過ぎてからも手応えがあって、しっかりと伸びてくれました。素質馬ですし、今後の活躍が楽しみです。」と、話した。2010年にはJRA年間最多騎乗回数を記録した騎手らしく、この日はJRA交流戦ではない9Rで地元馬に騎乗し、見事勝利を収めた。管理する栗東・五十嵐忠男調教師は、2着馬コスモコルデスと2頭出しで、見事ワン・ツーフィニッシュを飾った。

 本馬の生産は浦河町の安原実さん。昭和25年創業で、過去には優駿賞(現在のJRA賞)最優秀アラブに輝いたパークボーイを生産している。現在は84歳になる実さん一人の牧場で、馬の出し入れや種付けなどはお手伝いの方や業者に頼んでいる。繁殖牝馬はアルムダプタの母リベラノただ一頭。レースの感想を伺うと、「本当に良かったな、という気持ちです。重賞を勝つのは大変なことですから。」と、感慨深い様子。当日、競馬場には行けず、表彰台には代理の方が立った。

 「重賞に出るのは新聞でわかっていましたけど、うちは民放の競馬中継しか見られないもので…。結果は親しい獣医さんからの電話で知りました。夜に電話がかかってきて、“勝ったよ”と言うので、最初は何のことかわからず、“どこの馬だ?”と聞いたら、“あなたのとこの馬だ”と_それから、お祝いの電話とか、お酒が届いて、馬主さんとも電話で話しました。とても喜んでいました。」と、安原さんは笑う。

 アルムダプタの母リベラノは健在で、母系はダービー馬・ジャングルポケット、今年の函館2歳S(G3)を制したストークアンドレイが出ているファミリー。これまで8頭の仔を出産し、デビューした6頭全てがJRAで勝利している。現在はヨハネスブルグを受胎中で、1歳はヨハネスブルグの牡馬、当歳にはエンパイアメーカーの牝馬が生まれている。1歳は今年のHBAサマーセール1歳に上場され、1,260万円で安原浩司氏が落札した。

 キャリア一戦で重賞の壁を破ったアルムダプタ。馬名の由来は「堂々とした華麗な美」。雄大な栗毛はナイターに映え、その名にふさわしかった。負かした相手は評判馬ばかりで、その才能の高さは計り知れず。安原さんがライブでレース観戦できる日を願わずにはいられない。