馬産地ニュース

JRA生産地シンポジウムが行われる

  • 2012年07月13日
  • 主催者を代表して挨拶する益満宏行JRA馬事担当理事
    主催者を代表して挨拶する益満宏行JRA馬事担当理事
  • シンポジウムの座長を務めた服巻滋之氏(ハラマキファームクリニック)=左側=と佐藤文夫氏(JRA日高育成牧場)
    シンポジウムの座長を務めた服巻滋之氏(ハラマキファームクリニック)=左側=と佐藤文夫氏(JRA日高育成牧場)
  • 40回目を迎えた「生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」
    40回目を迎えた「生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」
  • 出席者からの質問に答える演者たち
    出席者からの質問に答える演者たち

 7月12日、新ひだか町静内の静内ウエリントンホテルにおいて、日本中央競馬会(JRA)主催の「第40回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」が行われた。

 シンポジウム開催に先立ち、益満宏行JRA馬事担当理事は「シンポジウムは今年で40回目を迎えました。お忙しい中、多数の参加を賜り御礼申し上げます。昨年の震災や昨今の世界情勢の不透明さから、競馬界のおかれた環境は厳しいですが、いつの時代にあっても優秀な駿馬を生産育成して競馬場に送り出し、お客様に素晴らしいレースを提供することが基本となります。このシンポジウムが強い馬づくりの一助となり、有意義な情報交換の場として機能することを期待しています」と挨拶。会場は獣医師や軽種馬生産者であふれ、立ち見が出るほど多くの牧場関係者が集まった。

 今回のシンポジウムのテーマは「軽種馬生産における若馬の昼夜放牧管理について」。座長はハラマキファームクリニックの服巻滋之氏、JRA日高育成牧場の佐藤文夫氏が務めた。近年、強い馬づくりを目指し、多くの牧場で昼夜放牧が行われ、科学的な検証が進んでいることから、昼夜放牧に対する考え方や手法、草地管理の観点から、両座長を含め6名の演者が講演を行なった。

 最初に佐藤文夫氏は昼夜放牧のメリットとデメリットを挙げ、問題を提起。メリットは放牧時間の増加による移動距離、運動量の増加、新奇環境刺激による精神的成長、栄養摂取の良化、社会性の獲得、群れへの順応、コスト削減など、デメリットは個体管理のしづらさ、夜間における不測の事態、怪我や事故、猛暑や落雷といった危険因子の増加、放牧地の荒廃などを指摘した。

 今年から冬季の夜間放牧を実施した社台ファームの加藤淳氏は「ストレスが減り精神的に安定した」とし、放牧地や蹄の管理、ボディーコンディションスコアの推移など課題はあるが、「心身ともに健康で丈夫な若馬を育てるには、今後も夜間放牧は必要不可欠」とまとめた。

 また、2006年から2008年にかけて冬季の夜間放牧を実施したエクセルマネジメントの瀬瀬賢氏は、冬季の夜間放牧を実施したときのデータと実施しなかったときのデータを示し、「リスクを抱え管理の難しい冬季の夜間放牧の実施は課題が多かった」と話した。

 講演後は演者が登壇。参加者からの質問に答えた。

 シンポジウム終了後は、昼休みを利用したランチョンセミナー、一般講演も行われた。

 当日行われた講演は下記の通り(敬称略)。

●シンポジウム「軽種馬生産における若馬の昼夜放牧管理について」
座長:服巻滋之(ハラマキファームクリニック)・佐藤文夫(JRA日高育成牧場)
1)若馬の昼夜放牧管理について 佐藤文夫(JRA日高育成牧場)
2)社台ファームにおける若馬の昼夜放牧管理 加藤淳(社台ファーム)
3)エクセルマネジメントにおける若馬の昼夜放牧への取り組み 瀬瀬賢(エクセルマネジメント)
4)日高育成牧場における厳冬期の昼夜放牧管理について 遠藤祥郎(JRA日高育成牧場)
5)昼夜放牧における草地管理について 三宅陽(日高農業改良普及センター)
6)昼夜放牧の功罪-冬期間の昼夜放牧を行なうべきか? 服巻滋之(ハラマキファームクリニック) 

●ランチョンセミナー「馬へのクラスⅣレーザーによる治療手技とプロトコール」 Dr.Ron Riegel(AIMLA)

●一般講演
座長:横田貞夫(JRA栗東トレーニング・センター)
1)健常競走馬および馬臨床獣医師におけるMRSA保菌調査 黒田泰輔(JRA栗東トレーニング・センター)
座長:近藤高志(JRA競走馬総合研究所栃木支所)・針生和久(JRA競走馬総合研究所栃木支所)
2)競走馬におけるニューモシスティス肺炎の一例 上野孝範(JRA競走馬総合研究所栃木支所)
3)日高管内における馬伝染性子宮炎対策の推進(清浄化達成までの30年の取組) 笹野憲吾(日高家畜保健衛生所)
4)現在の流行株に対するウマロタウイルスワクチン効果の検討 根本学(JRA競走馬総合研究所栃木支所)
座長:上野儀治(JRA競走馬総合研究所)・南保泰雄(JRA日高育成牧場)
5)蹄骨床縁切痕と縫際点蟻洞の関連性 大塚尚人(JRA日高育成牧場)
6)サラブレッド種1歳馬のセリレポジトリーにおけるレントゲン所見の調査 宮越大輔(日高軽種馬農業協同組合)
7)顆粒膜細胞種の診断におけるAMH(Anti-Mullerian Hormone) 村瀬晴崇(JRA日高育成牧場)
8)馬の駆虫薬使用要綱の見直しの必要性 加藤健(NOSAI日高 家畜診療センター)