世代別牝馬重賞シリーズ GRANDAME-JAPAN 2012 優勝馬のふるさとを訪ねて ロジータふたたび。

古馬シーズン総括(エーシンクールディ)

3歳シーズン総括(メイレディ)

古馬シーズン総括(エーシンクールディ)

2歳シーズン総括(カツゲキドラマ)

2011年度の「グランダム・ジャパン」古馬シーズンはシリーズ3勝を挙げたエーシンクールディ(笠松)の圧勝に終わったが、2012年度は最終戦までもつれにもつれ、「レディスプレリュード(大井)」の結果次第で順位がガラリと入れ替わるスリリングな展開となった。

第2戦の「読売レディス杯(金沢)」を快勝して連覇を目指すエーシンクールディをめぐり、第4戦「兵庫サマークイーン賞(姫路)」、第6戦「秋桜賞(名古屋)」の2レースでエーシンクールディを退けて優勝したロッソトウショウ(金沢)、第5戦「ビューチフル・ドリーマーC(水沢)」を制したサクラサクラサクラ(北海道)、第3戦「ノースクイーンC(門別)」を制したショウリダバンザイ(北海道)の4頭が、第6戦を終えて5ポイント差以内にひしめく大混戦。2012年古馬シーズンチャンピオンを目指して、その4頭が最終戦の舞台となる大井競馬場に顔を揃えた。

ここまでの暫定順位は、ロッソトウショウが25ポイントでトップ。次いでエーシンクールディとサクラサクラサクラが22ポイントで並び、ショウリダバンザイが20ポイント。第1戦のダートグレード「スパーキングレディC(川崎)」で2着に入って15ポイントを獲得しているクラーベセクレタ(船橋)にも逆転の可能性が残されており、まさに群雄割拠の様相。ダートグレードの「レディスプレリュード」で強豪JRA勢に割り込んで掲示板を確保することが、女王の座を獲得する絶対条件となった。


「GRANDAME-JAPAN2012」古馬シーズンチャンピオンに輝いたエーシンクールディ

結果は、エーシンクールディが2番手追走から4着に粘り込んで7ポイントを獲得。クラーベセクレタ(6着)、サクラサクラサクラ(7着)、ショウリダバンザイ(8着)、ロッソトウショウ(9着)はそれぞれ2ポイントのみの加算に終わり、大逆転でエーシンクールディが2年連続「グランダム・ジャパン」古馬シーズンチャンピオンに輝いた。2位のロッソトウショウとは2ポイント差、3位のサクラサクラサクラとも5ポイント差という大接戦だったが、出走した4戦すべて掲示板を確保する堅実さでポイントを加算していったエーシンクールディは、やはり2012年度も女王の名に最も相応しい牝馬だったのではないだろうか。

エーシンクールディは、父ディストーテッドヒューマー、母キャタリナ、母の父ストームキャットという血統のアメリカ産馬。半兄に2007年のスプリングSで3着に入って皐月賞にも出走したエーシンピーシー(父フサイチペガサス)がいる。


「GRANDAME-JAPAN2012」古馬シーズン第2戦「読売レディス杯(金沢)」

日本人の吉田直哉氏が代表を務めるケンタッキー州のウィンチェスターファームで生まれ、日本へ輸入されて栗東・大久保龍志厩舎へ入厩。3歳3月に阪神競馬場でデビューし、4歳時にはJRAオープンまで上り詰めて重賞レースにも出走。5歳夏に笠松・伊藤強一厩舎へと移籍し、いきなり重賞3連勝を収め、ダートグレードの「サマーチャンピオン(佐賀)」「レディスプレリュード(大井)」でも地方馬歳先着となる好走を見せた。その後も全国の競馬場を飛び回って活躍を続け、通算38戦15勝(地方移籍後20戦10勝)の戦績を残し、「グランダム・ジャパン」古馬シーズン連覇の実績を引っさげて、2013年より北海道浦河町の栄進牧場で繁殖牝馬となることが決まった。

これだけの活躍を見せた牝馬が母親になるというだけでも楽しみだが、血統的にもミスタープロスペクター~フォーティナイナー~ディストーテッドヒューマーというアメリカを代表する流れを汲む血統に、日本が誇る良血種牡馬が配合された場合、どんな産駒が誕生してくるだろうかと考えるとワクワクしてくる。すでに初年度の配合相手はめぼしがついているのかも知れないが、JBIS-Searchの「架空血統表」を使い、日本で繋養されている種牡馬との相性を探ってみよう。

エーシンクールディ自身がノーザンダンサーの4×4というクロスを持ち合わせているので、基本的にサンデーサイレンス系種牡馬との相性は良いものと思われるが、特に注目したいのがディープインパクトとの間に発生するクロス【架空血統表1】。ノーザンダンサーの5×5×5というクロスは、昨年の三冠牝馬であり、JRA賞年度代表馬に選出されたジェンティルドンナのクロス(ノーザンダンサーの4×5×5)に近似する。更に父ディープインパクト×母の父ストームキャットの配合からは、昨年の「ラジオNIKKEI杯2歳S(G3)」3着のキズナ、「アルテミスS(重賞)」2着のアユサン、「萩S(オープン)」優勝のインパラトールと、今年のクラシック戦線を沸かしてくれそうな馬が多数出現し、いま最も旬な配合とも言えそうだ。

また同じサンデーサイレンス系のダイワメジャーとは、ノーザンダンサーの4×5×5というクロスが発生【架空血統表2】。母系にストームキャットが入るダイワメジャー産駒といえば、昨年の「NHKマイルC(G1)」優勝馬カレンブラックヒルなどが代表に挙げられる。

エーシンクールディと同じ冠(エーシン、エイシン含む)を持つ現役種牡馬は、エイシンサンディ(父サンデーサイレンス)、エイシンデピュティ(父フレンチデピュティ)、エーシンフォワード(父フォレストワイルドキャット)、エイシンアポロン(父ジャイアンツコーズウェイ)の4頭が、新ひだか町静内のレックススタッドで繋養されている。それぞれの種牡馬にノーザンダンサーの血が入っているので4代、5代でクロスが生じるが、特に今シーズンから種牡馬入りしたエイシンアポロンに関しては、自身がノーザンダンサーの3×4×4というクロスを持つので、エーシンクールディとの配合では、ノーザンダンサーの4×5×5×5×5、ストームキャットの3×3という濃厚なクロスが生じる【架空血統表3】。

いずれにせよ、幅広い選択肢の中から配合相手を選べそうな血統構成で、繁殖牝馬として非常に楽しみな存在だ。“ダービー馬はダービー馬から”との格言があるが、エーシンクールディには、“グランダム・ジャパン女王はグランダム・ジャパン女王から”を実現させる母親になってほしい。