馬産地コラム

エスポワールシチーを訪ねて~優駿スタリオンステーション

  • 2016年02月22日
  • エスポワールシチー
    エスポワールシチー
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    エスポワールシチー

 優駿スタリオンステーションは、個性派種牡馬の宝庫だ。2005年、08年のJRA最優秀ダートホースのカネヒキリがいる。09、10年に同タイトルを獲得したエスポワールシチーがいる。JBCスプリントの覇者は2頭。19歳になったスターリングローズは02年の優勝馬で、今年から新加入となったタイセイレジェンドは12年川崎競馬場ダート1400m戦でレコードタイムを記録している。

 ほかキングヘイロー(00年)、カレンブラックヒル(13年)もフェブラリーステークスの1番人気馬で、ノーザンリバーは14年の4着馬。ローレルゲレイロだって2010年の同レースでハナを奪ってレースを引っ張った。ちょっと変わったところでは16年のフェブラリーステークス(G1)をレコード勝ちしたモーニンの父ヘニーヒューズも同スタリオンで種牡馬生活を送っている。

 そんなことを考えながら、放牧地までの道をゆく。供用3年目を迎えるエスポワールシチーを見つけるのは、そんなに難しいことではない。朝日に輝く栗毛の馬体。さすが現役時代と比較すると筋肉は落ちたが、それでも逞しい馬体は健在だ。

 「1年目、2年目と比べると、少しは落ち着いたと思います。気の強さはそのままですが、放牧地を走りまわることは少なくなりました」というのは同スタリオンステーションの山崎努主任。とはいえ、本格的な種付けシーズン前、多くの馬が馬服を着用して体調管理をしている中で、この馬は裸のまま放牧されているのは「ほかの馬に比べると、やはり運動量が多いのだと思います。馬服を着せていると、汗をたくさんかいてしまうのです」と教えてくれた。

 この日も、ひと通りの運動を終えたのだろう。汗の跡が残る馬体で、雪が解けた放牧地を歩くエスポワールシチーは、どこか満足そうだ。土の下からわずかに顔をのぞかせている新芽をついばむように歩き回る。走らないとはいえ、動きがとまらないのはエスポワールシチーらしい所以だろうと思う。

 種牡馬にとって供用3年目は勝負の年。初年度に110頭、2年目に91頭の繁殖牝馬に配合したとはいえ、次々とスタッドインを果たす同タイプの種牡馬に新鮮さで見劣り、産駒を市場でアピールできる頃には種付シーズンは終わりとなる3年目は鬼門だ。

 「何頭か、生まれた仔を見てまわりましたが、どちらかと言えば父親に似ている仔が多いと感じました。しっかりした筋肉が頼もしいです」と山崎さん。「身のこなしが俊敏で手先が軽い馬ですから、芝コースがまったくダメとは思いませんが、エスポワールシチーのように個性がはっきりした馬、伝えるべきものをはっきり持っている馬というのは生産者の方々にとっても配合しやすいと思います」と手応えを感じている。

 「この馬の産駒がフェブラリーS(G1)を勝てば、父仔3代で同一G1勝利となります。そんなことも楽しみのひとつです」と来年に迫った産駒デビューを楽しみにしている。