馬産地コラム

サクラエキスパートを訪ねて~今牧場

  • 2015年01月21日
  • サクラエキスパート
    サクラエキスパート
  • 体調は良好
    体調は良好
  • 隣のパドックにはトップオブツヨシ
    隣のパドックにはトップオブツヨシ
  • トップオブツヨシ
    トップオブツヨシ
  • 今牧場
    今牧場

   1997年の愛知杯(G3)優勝馬サクラエキスパート(22歳 牡 今牧場生産 静内町)を訪ねた。引退してすぐに生まれ故郷の今牧場に戻り、功労馬として余生をのんびり過ごしている。

   サクラエキスパートは1993年4月13日生まれ、父サクラチヨノオー、母サクラギャルという血統。サクラチヨノオーは1987年朝日杯3歳S(G1)、1988年東京優駿(G1)の優勝馬で、同世代にサッカーボーイやオグリキャップなどがいる。

   1995年2歳時にデビューし、2戦目で初勝利を挙げた。3歳時は昇級初戦こそ11着だったがその他のレースは1着2着と安定した内容でオープン馬に昇格した。4歳になっても好走が続きUHB杯(OP)3着、朝日チャレンジC(G3)5着、カブトヤマ記念(G3)2着、京阪杯(G3)5着、そして暮れの愛知杯(G3)で念願の重賞初制覇を果たした。結局重賞優勝はこのレースのみだが、大崩のない安定した走りが印象的な渋い馬だった。

   同馬を生産した今牧場は静内川中流の広い河川敷にあって、過去にはチアズメッセージ(2004年京都牝馬S(G3)やチアズブライトリー(2004年七夕賞(G3)などを生産している。現在の牧場主今靖弘さんは4代目にあたり、学生の頃から家業を手伝いながら脈々と受け継がれてきた家族の想いを身を持って感じ取り腕を磨いて来た。現在、今牧場の繁殖牝馬は15頭。春の出産にむけて準備を進めている。「生まれてきた馬達が全頭無事に競走馬になって各地の競馬場で走って欲しい、それを目標に頑張っています。」

   サクラエキスパートは6歳で競走馬を引退し、すぐに今牧場に帰って来た。帰って来た当初はムキムキのマッチョな体つきで、毛ヅヤもピカピカだったそうだ。「引退して間もない頃は、ファンの方が何十人も会いに来てくれていました。その頃より少なくはなりましたが、今でも会いに来てくれていますよ。」笑顔で話しながら今靖弘さんはサクラエキスパートのパドックに案内してくれた。「牧場に帰って来てから今まで16年間、病気も怪我も無く、一度も医者にかかっていないんです。とても穏やかで大人しい性格で、放牧集牧時に移動する時も、犬の散歩をしているかのように従順なんです。」パドックの前に立つとゆっくり寄ってきて人懐っこく鼻先を押し付けて来るところが微笑ましい。豊かな冬毛で覆われ暖かそうだ。「うちは小さな家族経営の生産牧場ですが、ここで生まれて重賞を勝ってくれた事に、本当に感謝しています。こうして今も変わらず元気でいてくれるので、このまま健康で長生きしてくれるようにエキスパート自身も頑張って欲しいですし私達もちょっとした変化にも気を付けて行きたいです。」

   サクラエキスパートの横のパドックにも人懐っこい馬が入っていた。名前を今さんに尋ねると「タヤスツヨシ産駒のトップオブツヨシです。種牡馬でしたが今は馬主さんの意向で休止しています。」とのこと。静内町に行った際には今牧場までサクラエキスパートに会いに行ってみてはいかがだろうか。