馬産地コラム

バゴを訪ねて~JBBA静内種馬場

  • 2015年01月06日
  • バゴ
    バゴ
  • 前向きな気性で負けん気が強い
    前向きな気性で負けん気が強い
  • 凱旋門賞馬の貫録を見せる
    凱旋門賞馬の貫録を見せる
  • 柔らかい身のこなしが特徴
    柔らかい身のこなしが特徴

   年々日本の競馬ファンの関心が高まっている凱旋門賞(G1)。果たして2015年は牙城を崩す馬が現れるだろうかと興味深い。勝ち馬に迫ったエルコンドルパサーやナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、ディープインパクトらを超越する結果を出す馬は、いったいどんな馬なのだろう。

    そんな思いをめぐらせながら、新ひだか町静内のJBBA静内種馬場にやってきた。2004年、栄えある凱旋門賞(G1)の、第83回勝者と対面した。しなやかに体を動かし、元気一杯に目の前を周回するバゴ(仏国産)がその勝者で、今回の取材のお目当てだ。

   14歳となる彼は年齢以上に若々しく、活気に満ち溢れていた。軽く弾むように歩き、毛ヅヤが黒光りしている。「元気があり過ぎるぐらいで、健康状態は良好ですね。種牡馬として10シーズン目を前に、心身充実しています。気性は前向きで、負けん気が強いですね。柔軟性に富み、全身を使って動く馬で、体以上に大きく見せます。」と、紹介してくれたのは、同種馬場の中西信吾場長。何も身に付けない裸のままの状態が彼の好みらしく、馬服を着せると自ら器用に脱いでしまうこともあるという。パレードリンクを歩く表情には余裕があり、パッと決めポーズをとってくれた。

    昨年は72頭の繁殖牝馬を迎え、一昨年以上の交配数を記録した。受胎率は良く、種付けで手を焼くことは少ないという。産駒はこれまで6世代がデビューし、初年度産駒から菊花賞(G1)馬ビッグウィーク、桜花賞(G1)2着馬オウケンサクラが出現し、幸先良いスタートを切った。その後も重賞馬が誕生し、一昨年はクリスマスが函館2歳S(G3)を制して牝馬クラシックへ。昨年は秋に攻勢があり、サカジロロイヤルの京阪杯(G3)3着好走を皮切りに、交流重賞・クイーン賞(Jpn3)ではトロワボヌール、アクティビューティがワン・ツーフィニッシュ。3歳世代のタガノアザガルはすでに2勝をマークし、朝日杯フューチュリティS(G1)に挑んだ。中西場長は、「バゴのバランスの良さ、皮膚の薄さが産駒に遺伝していますね。仕上がりの早い馬もいれば、遅咲きの馬もいて、芝・ダート、性別問わず活躍馬が出ています。自身が凱旋門賞(G1)で見せたような切れ味を受け継ぎ、日本の芝適性も十分。万能なタイプですね。」と、特徴を伝える。昨今は1歳セールで高く競り上がる馬も目立ち、初年度産駒ブレイク後、改めて熱い視線が注がれている。

    先月のJRA・2歳G1は2週連続でディープインパクト産駒が射止め、ダート一流馬が集ったチャンピオンズC(G1)はキングカメハメハ産駒が快勝。リーディングサイアーを牽引する巨頭が築く壁も、日本馬の挑む異国の頂同様、また高いのかもしれない。されど、そこに一矢報いる馬や血統の勝負が、競馬を一層面白くし、盛り上げるのではないだろうか。

    「今の3歳世代は初年度産駒の走りを受けて種付けが増えた世代で、100頭を超します。これからデビューする馬も含めて、クラシックを狙える逸材が現れると期待しています。これからも結果を出して、より優れた繁殖牝馬を集めていきたいです。」と、中西場長は望んでいる。遠くロンシャンの大舞台で鮮やかに駆け抜けたその脚は、日本の地から息子・娘たちが幾度と再現していくに違いない。