馬産地コラム

ロンシャンボーイを訪ねて~ヒダカファーム

  • 2014年12月01日
  • ロンシャンボーイ
    ロンシャンボーイ
  • 近藤聡明社長と
    近藤聡明社長と
  • 生まれ故郷で功労馬生活を送っている
    生まれ故郷で功労馬生活を送っている
  • 生活している厩舎
    生活している厩舎

 1993年京阪杯(G3)で、人気馬を尻目に逃げ切り重賞初制覇したロンシャンボーイ(1989年ヒダカファーム生産)を訪ねた。現在は生まれ故郷のヒダカファームで功労馬生活を送っている。

 父は菊花賞に勝ったホリスキー。母ファーストヒダカもヒダカファーム生産馬で、南関東のレースで14戦7勝という成績を残している。

 そんな血統背景を持つロンシャンボーイは4歳の5月に京都でデビューした。1993年京阪杯(G3)は8番人気、高松宮杯(G2)では7番人気の中で逃げ切り勝ちを収め周囲を驚かせた。人気薄の時に快走をみせるという魅力あるレースをする馬だった。

 8歳で競走馬を引退して、生まれ育ったヒダカファームに帰って来た。当初は乗馬として活躍していた時期もあったが、少し反抗する部分が出てきたので無理強いをせずに乗馬をやめて、功労馬としての生活をスタートさせたそうだ。

 取材のためにヒダカファームに到着するとすぐに近藤聡明社長が出迎えてくれて、ロンシャンボーイの放牧地に案内してくれた。「25歳になるのですが、毛ヅヤは良いですね。」そう言いながら「じいさん!おいで。」と声をかけた。名前はロンシャンボーイだが、愛称はじいさん。生まれ育ち巣立って行き、活躍してこうして無事に帰って来てくれた事、そして牧場内で一番高齢で古株であることから、親しみを込めてみんなにそう呼ばれ可愛がられているのだ。

 「功労馬になってから数年前まで、じいさんは教育係として中期育成段階の1歳馬と一緒に放牧され若馬と走り回っていたそうです。賢くてとても力が強い馬だったので、どんなにうるさい1歳馬でもじいさんに任せておけば大抵の事は教育してくれる、頼りになる馬だったと聞いています。」そう教えてくれたのはヒダカファームのスタッフ加藤仁和さん(31歳)。加藤さんがヒダカファームに来た時、既にロンシャンボーイは功労馬として生活していたそうだ。「普段は大人しくて動じない馬ですが、初めて会う人にはなついていかない所がありますね。今でも昔と変わらず力持ちなので放牧や集牧の時は気を付けていますよ。」

 朝5時に飼いつけ、6時に放牧、夕方4時集牧、飼い葉つけという生活リズム。食欲も変わらずあって、ゆっくり1時間くらいかけて食べているそうだ。「今まで大きな病気も怪我もなく来てくれています。毛ヅヤも良いのでこの状態を維持して健康でいて欲しいですね。」じいさんと呼ばれるヒダカファームのアイドルホース。これからも1歳馬を遠くから見守りながら、元気で過ごして欲しい。