馬産地コラム

メイショウサムソンを訪ねて~イーストスタッド

  • 2014年10月30日
  • メイショウサムソン
    メイショウサムソン
  • 11歳となった今年から、故郷に近いイーストスタッドで種牡馬生活を送る
    11歳となった今年から、故郷に近いイーストスタッドで種牡馬生活を送る
  • 牧場での呼び名は「サムソン」
    牧場での呼び名は「サムソン」
  • 目当てに来る見学者は多い
    目当てに来る見学者は多い

 2006年のダービー馬メイショウサムソン(林孝輝牧場生産)を訪ねた。今年から生まれ故郷に近いイーストスタッドで種牡馬生活を開始し、地元期待のスタリオンとして親しまれている。

 放牧地に行くと、同じ勝負服で走ったメイショウボーラーの隣りの放牧地で草を食んでいた。バランスの良い馬体、まだ11歳だから種牡馬としては若い部類だ。ダービー馬らしい貫録は父となってなお増している。穏やかな表情は新しい環境に慣れたことを示すかのよう。

 「こちらに移って最初のシーズンを終え、健康に過ごしています。浦河の繁殖牝馬を含め、昨年以上の交配数を記録しました。普段は大人しいですが、何か気に入らないことがあるとカーっとなることがあるので、気を付けています。」と、紹介してくれたのは同スタッドの青木大典場長。馬にとって過ごしやすい秋も後半に入り、地面が雪で覆われないうちはなるべく長い時間を放牧にあてている。

 現役時代は2歳夏のデビューで、トントンとオープン・重賞勝ちを重ねて3歳時は皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)を制覇。3冠のかかった菊花賞(G1)ではソングオブウインドの4着に敗れたが、その年のJRA賞・最優秀3歳牡馬を受賞した。4歳時は天皇賞(G1)の春秋連覇を達成。古馬となってもダービー馬に恥じない成績を残し、翌年秋にはフランスに渡って凱旋門賞(G1)にも参戦した。母の父ダンシングブレーヴのように勝利はならなかったが、果敢なチャレンジは日本の競馬ファンを熱くさせた。通算成績は27戦9勝。オペラハウス産駒の中ではテイエムオペラオーに次ぐ10億円を超す賞金を獲得した。

 2009年から種牡馬生活を始め、産駒は3世代がデビュー。初年度産駒サムソンズプライドが日本ダービー(G1)に駒を進め、トーセンアルニカはエリザベス女王杯(G1)で勝ち馬から0.5秒差の4着に健闘した。父のように芝中長距離を得意とする産駒が目立つが、地方では3歳のノゾミダイヤが連戦連勝で重賞馬となり、2歳のハニームーンがレベルの高いホッカイドウ競馬重賞で好走を果たしている。青木場長は、「レースを使うたびに強くなる産駒が多いですね。やはり芝の成績が良いですが、地方ダートでも活躍馬も出てきました。配合にもよると思いますが、ダート適性もありそうです。」と、産駒の走りを見ている。

 興味深いのは同じく日本調教馬として凱旋門賞(G1)に挑んだエルコンドルパサーとの相性だ。父メイショウサムソン×母の父エルコンドルパサーという配合では、前述のサムソンズプライド、トーセンアルニカに加え、ソムニアシチー、ミラクルルージュもJRAで勝利している。偶然なのかはわからないが、今後も注目してみたい組み合わせだ。

 「確かにエルコンドルパサーとは相性が良さそうですね。サンデーサイレンス系やミスタープロスペクター系と配合できる点は強みです。」と、青木場長。ヨーロッパ色の濃い父系と国内主流血統のマッチに、大物誕生の期待がかけられている。

 浦河へ来て以来、間近で見学できることもあってだろうか、期間中はファンと思しき方が多数足を運んでいるという。さすがダービー馬の威力だ。青木場長は、「今年は全体的に見学者が多いですが、中でもオウケンブルースリやメイショウサムソンが人気です。サムソンはわりと大人しいので、ツアーでは記念写真で起用することもあります。」と、スターな存在に感心している。

 見学者の視線を受けながら、放牧地ではのんびりと過ごしているメイショウサムソンだが、競走馬時代は接戦をよく制した。その秘めたる闘争心や勝負強さは、産駒へと受け継がれていくだろう。

 「2歳、1歳世代も豊富にいるので心強いです。まずは種牡馬としてJRA重賞馬を送り出したいですね。」と、青木場長は次なる勲章を意識する。懐かしい浦河の空気を吸いながら、サムソンはどことなく余裕の表情でいて、ドンと構えている姿が頼もしい。種牡馬生活6年目を終え、これからが正念場かもしれないが、優れた潜在能力は誰もが知るところ。

 浦河から再び長打を狙って欲しい。