馬産地コラム

コスモネモシンを訪ねて~ビッグレッドファーム

  • 2014年09月11日
  • コスモネモシン
    コスモネモシン
  • 新しい環境に慣れ、ふっくらしてきた
    新しい環境に慣れ、ふっくらしてきた
  • 広い放牧地でのびのび過ごしている
    広い放牧地でのびのび過ごしている
  • 母仔重賞制覇を目指している
    母仔重賞制覇を目指している

   2010年のフェアリーS(G3)と2013年の新潟記念(G3)の勝ち馬コスモネモシン(富田恭司さん生産)を訪ねた。今年1月にJRA競走馬登録を抹消し、繁殖牝馬となっている。

   「牧場に来てから半年以上が経過し、環境に慣れてきました。だいぶ体つきがふっくらしてきましたね。まだ7歳ですから心身若々しく、元気いっぱいに過ごしています。」と、近況を語ってくれたのは、繁殖生活の場であるビッグレッドファーム繁殖担当の菊池聡さん。牧場での愛称は「ネモ」や「ネモシン」。今春はアイルハヴアナザーと種付けしたが、残念ながら受胎に至らなかった。現在は今年出産していない繁殖牝馬のグループで、リラックスした毎日を送っている。

   コスモネモシンは現役時代3勝。HBAサマーセール出身馬で、当時367万5,000円で取り引きされた。ビッグレッドファームの勝負服で、美浦・清水英克厩舎からデビュー。2歳暮れに初勝利をあげると、続くフェアリーS(G3)を快勝し、牝馬クラシックでは同じ関東所属の強豪アパパネ、サンテミリオンらとしのぎを削った。

   古馬となってからはマイル~中距離を中心に走り、6歳時に挑んだ新潟記念(G3)では牡馬を打ち破って重賞2勝目を飾った。4歳時にはハイレベルのG2で知られる札幌記念(G2)で0.3秒差4着に健闘するなど、重賞では度々上位争いし、ゼンノロブロイ産駒の牝馬としては現時点で第1位の獲得賞金を記録している。

   振り返ると、重賞勝ち2つはともに2着とはクビ差。接戦を制してのタイトルだった。競走馬としては自己主張の強いタイプだったという。「頑固な面を見せて、調教では苦労したそうです。一方で、そうした譲らないという気持ちが、レースで武器になったのかもしれません。繁殖入りしてからは、幾分穏やかになってきたかなとは思います。人間の指示にもよく従っています。」と、菊池さん。仲良しの繁殖牝馬コスモバタフライと一緒に草を食む姿には、温厚な様子を見て取れたが、内に秘めた強いハートに現場スタッフは留意している。

   コスモネモシンの母の父はジャパンC(G1)勝ち馬シングスピール。その血統からは、ロゴタイプのクラシック制覇で人気上昇の種牡馬ローエングリンや、2歳女王で今夏キーンランドC(G3)を制したローブティサージュが活躍している。底力のある血を生かし、繁殖牝馬として大物を出す可能性は十分だろう。菊池さんも意欲を燃やしている。

   「これだけの競走成績を収めた馬ですから、仔に対しての期待も当然大きいです。まずは来年、しっかり受胎できるように努めていきます。現役当時は人気薄で重賞を勝った馬でもあり、ネモシンの仔たちも競馬場でアッと驚くような走りを見せて欲しいですね。」