馬産地コラム

シンメイフジを訪ねて~ケイアイファーム

  • 2014年09月10日
  • シンメイフジ
    シンメイフジ
  • 今年はケイアイファーム生産のG1馬ロードカナロアを交配し、受胎している
    今年はケイアイファーム生産のG1馬ロードカナロアを交配し、受胎している
  • 今年生まれた当歳は父キングズベストの牡馬
    今年生まれた当歳は父キングズベストの牡馬
  • 祖母レディミューズ譲りの栗毛馬
    祖母レディミューズ譲りの栗毛馬

 2010年の関東オークス(Jpn2)、2009年の新潟2歳S(Jpn3)の勝ち馬シンメイフジ(ケイアイファーム生産)を訪ねた。現在は生まれ故郷のケイアイファームで繁殖生活を送っている。

 シンメイフジは2007年生まれの牝馬。父フジキセキ、母レディミューズ、祖母はG1馬シンコウラブリイという血統で、現役時代は栗東・安田隆行厩舎からデビューした。早くから優れた能力を発揮し、2歳夏の新馬戦を勝つと、続くダリア賞で2着。3戦目に迎えた新潟2歳S(Jpn3)では道中18番手から怒涛の追い込みを見せ、鮮烈に重賞Vを飾った。その後、駒を進めた阪神ジュベナイルフィリーズ(Jpn1)、JRAクラシックではアパパネ、サンテミリオンに敗れたが、初ダートで挑んだ交流重賞・関東オークス(Jpn2)を快勝し、芝・ダートでタイトルを獲得した。古馬となってからは勝ち星を得られなかったが、4歳時のエリザベス女王杯(G1)では大逃げを打ち、直線半ばまでスノーフェアリー、アヴェンチュラ相手に敢然とリードを奪い、見せ場を作った。

 引退後は繁殖牝馬となり、現在は広々とした放牧地で、子育てに励んでいる。「すっかり母馬らしくなってきましたね。健康状態は良好で、出産も種付けも問題ありません。レディミューズの仔は気性の強い馬が多いのですが、シンメイフジは大人しく、扱いやすいです。」と、紹介してくれたのは、同牧場ゼネラルマネージャーを務める中村智幸さん。母仔で写真を撮ると、サッとスタッフの合図に反応して耳を立てた。腹回りがしっかりして、母馬としての風格が出ている。今年はロードカナロアと交配し、無事受胎したという。

 すでに誕生している仔は2頭で、1歳の初仔が父エンパイアメーカーの牝馬、今年の当歳が父キングズベストの牡馬で、ともに健やかに成長している。中村さんによると、「1歳の仔は初仔の分、小ぶりですが、バランスのとれた馬です。気性が良く、人間の指示をよく理解しています。当歳の仔も順調に育っていますよ。」とのお話。当歳の牡馬は祖母譲りの栗毛で、額に大きな流星がある。引き手のスタッフの方は、そのインパクトのある顔に笑み。派手な風貌から連想するわけではないが、母のような印象的なレースをやってくれそうな雰囲気だ。

 あっと驚く逃げ脚、ゴボウ抜きした末脚、芝でのキレ、ダートでのパワー…多彩な走りを見せたシンメイフジから、その息子、娘たちはどんな特長・個性を示すか興味深い。中村さんは将来を見据えて、「母仔重賞制覇を期待しています。仔もクラシックに送り出したいですね。母同様、芝・ダートで適性のある馬を出していけるでしょう。来春はロードカナロアとの仔が生まれますし、楽しみにしています。」と、声を弾ませる。今度は母として、競走馬のふるさと案内所の重賞馬コーナーに再び登場する日も、近いのではないだろうか。