馬産地コラム

あの馬は今Vol.13~菊花賞・スーパークリーク

  • 2006年10月30日
  • スーパークリーク1
    スーパークリーク1
  • スーパークリーク2
    スーパークリーク2
  • スーパークリーク3
    スーパークリーク3
1988年11月6日 菊花賞

 1980年代後半のニッポン競馬は「チャンピオンの時代」だった。前年秋、すい星のごとく登場し、下級条件から7連勝。重賞5連勝中のタマモクロスに、JRA移籍後6戦不敗のオグリキャップが挑んだ天皇賞・秋から1週間。時代は、新しいチャンピオン候補を求めていた。
 ここまで7戦2勝。菊花賞への出走権をかけて挑んだトライアルの京都新聞杯で数回の不利を受けて敗退したスーパークリークは、最後のクラシックに向けて、賞金不足から出走が危ぶまれていた。それでも、強運をいかしてゲートインを果たすと、当時19歳の天才ジョッキー武豊騎手を背に淀の3000mを鮮やかに駆け抜けた。2着馬ははるか後方におかれ、1番人気に支持されたヤエノムテキは血のなせる距離の壁の前に馬群に沈んだ。
 インターメゾ、サヤジラオといったスタミナ血脈を内在させる母系にノーアテンションを配合した生産者は当時「ステイヤーを狙った配合で、長距離のG1レースに勝てた。これほど冥利に尽きることはありません」と話している。その言葉どおりにスーパークリークは、その後天皇賞春秋連覇を達成するなど、オグリキャップやイナリワンとともに3強時代を盛り上げた。
 それから16年。現在は、浦河町の日高スタリオンステーションで種牡馬兼試情馬として平穏な日々を過ごしている。21歳。現役当時から細身のステイヤー体型だった同馬は、今もその面影を残している。「食欲はあるんだよ。なかなか肉にならないのは若いときから同じですよ。それでも、昨年よりも今年の方が体調が良いみたいです」とスタッフ。
 「人間に対しても、馬に対しても、とても穏やかな馬ですね。種付なんかも上手ですよ。今でも多くのファンが訪ねてきてくれます。嬉しいですね」と三好正義場長も目を細めている。
 それでも、嬉しい知らせもある。昨年、3年ぶりに2頭の繁殖牝馬に配合し、この春はニホンピロウイナーを父に持つ繁殖牝馬との間に1頭の牡馬が誕生した。スーパークリーク21歳。まだまだ現役だ。

   26日取材   日高案内所取材班