馬産地コラム

あの馬は今Vol.3~桜花賞・ブロケード

  • 2006年04月05日
  • ブロケード
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 うら若き3歳牝馬が“早さと美を競う”などと形容される桜花賞。  その歴史の中で他馬の後塵を拝することなく不敗のまま桜の女王に輝いたのはわずかに6頭しかいない。おりしも牡馬三冠馬と同じ数字だ。
 その中で異色の輝きを放っているのが1981年に史上3頭目(当時)の不敗の桜花賞馬となったブロケード(78年生、栗毛、父イエローゴッド、母マリンエクスプレス、静内・三沢牧場生産)だ。
 この年、折からの雨で馬場は最悪の状態になり、勝ちタイムの1分41秒3は阪神競馬場で行われた桜花賞での最低記録。ゴール前ではほとんどの馬が勝負服の判別もつかないくらいに真っ黒になっていた。
 そんな中、唯一、泥ひとつ浴びない柴田政人騎手(現調教師)の勝負服のあでやかさが鮮烈な印象を与えてくれた。ブロケードという馬名は金糸、銀糸で織った布を意味するというから、“汚れなき金襴緞子の花嫁衣裳”などといわれた。

 そのブロケードも28歳になり、現在はオーナー所有のサンシャイン牧場(日高町豊郷)で静かな余生を送っている。まだ現役当時の面影を残すほど若々しい。「若い繁殖牝馬と一緒に放しているんです。それが若さの秘訣かもしれません」と三瓶浩繁殖場長は目を細める。春シーズンともなれば発情を見せて、牡馬を呼ぶ仕草も見せるというから驚きだ。
 不敗で制した桜花賞。“日の丸特攻隊”サクラシンゲキを一蹴したスプリンターズS。距離に散ったオークス。しかし、筆者がベストレースを選ぶとすれば前年の桜花賞馬ハギノトップレディと一期討ちを演じた81年の巴賞だ。逃げるライバルをピッタリとマークし、3角手前から一気に先頭に立つと、ゴール直前まで先輩桜花賞馬を苦しめた。ハギノトップレディのベストレースとして取り上げられることの多い同レースだが、同馬の強さを引き出したのは他ならぬブロケードの積極戦法だった。
 これら名勝負を残して24戦6勝2着9回3着1回で引退。85年から生まれ故郷の三沢牧場で繁殖牝馬となった。残念ながら直仔では活躍馬には恵まれなかったが、孫の代には99年のグランシャリオCに優勝したマイシーズンが出るなど、その血を後世に伝えている。
 「繁殖生活は引退しましたけど、まだまだ元気です。安心してください」とは牧場からのメッセージだ。